頓珍漢の雑学

65. 原爆

8月6日は広島、8月9日は長崎に原爆が落とされた記念日である。53年前、文字どうり寝耳に水の急襲で犠牲になられた数十万の方たち、今なお心身に傷を負って生きて居られる人達、更に後遺症を抱いたまま毎年亡くなって行かれる何千人もの方々の事に思いを馳せると、申し上げ様も無く心が痛むのである。

当時は言論統制もあったセイもあろうが、『新型爆弾』が少数のB29の来襲で落とされて探刻な打撃を蒙(こうむ)った事が、それも確か1日程遅れて発表された。恐らく（此れはズーツと後になってバレた事であるが）其の頃、徹底抗戦を唱える者と、何とか終結を謀ろうとする者とが連日激論を戦わして居た所への『晴天の霹靂(へきれき)』的なニュースで、オ偉い方々も動転の極に達して居たのであろう。

アメリカで『原子力研究所』がスタートしたのは1940（昭和15）年である。
アインシュタインが『相対性原理』から導き出した有名な公式 E=mc²　［エネルギー＝(質量)×(光速)²の式から、質量を100%エネルギーに変えられたら途方も無い大きいものになる。

其れは不可能としても、原子を連鎖反応で崩壊出来れば、従来の方法よりは遥かに大きなエネルギーが得られ、兵器にも使える。
戦争前の事だし、我が国の軍部も学者も知って居たに違い無い。『原子論』では我が国も世界一流と思って居ただけに、『原子爆弾』の理論と可能性は知っていた筈だが、マサカ其れ程早く実現するとは、半信半疑でもあった訳である。　　

序(つい)でながら私の専門分野である高分子でも、撃墜したアメリカ機からの押収品にポリエチレン製品があって初めてオ目にかかり驚いた事があった。実用化されて居る等、日本では思いも寄らなかったからである。

話を戻すが、判り易い様に言うと、広島に落とされたのは『ウラン（²³⁵U）』爆弾で、1kgで在来のTNT爆薬の約2万トン分の破壊力のある物であった。
長崎のは『プルトニューム（²³⁹Pu）』爆弾で此れより少し強力な物である。何れもアメリカがアインシュタインはじめ一流の学者、技術者を総動員して、5年間と言う短期間に、この年（1945）6月に完成したばかりの作品を試験したのである。

後になってアメリカでも特に学者達の中には後悔する人も出たが、最近まで核開発戦争が続き後始末が大問題として持ち越されて居る事を世界中の人に忘れて貰いたく無い、と願うのである。

同時に私は次の事を訴えたい。
即ち、人間は『原子力』を手に入れて『神様』に近づいた気持ちかも知れないが、『原子力利用』の身近かな家元は太陽である。『核融合』と言うプロセスで太陽が放射して居るエネルギーは、毎秒TNTに換算して約1万トンの10兆倍で、人間は其のホンの一滴を利用して生きて居る。最新の『水爆（水素爆弾）』だとTNTの100万トン（メガトン）位の威力があると言うが、それでも太陽エネルギーの極々僅かなオコボレから生まれた台風一つ消すには1000コ位必要である。人間は、其の様に大きな自然には逆らえ無い、流れに浮かぶウタカタ（泡ツブ）みたいなものである。此の事を忘れた時、人類が破滅の道を辿(たど)るのは間違い無い。

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